ISOコラム

ISOの豆知識から失敗談まで!? 或る主任審査員のつぶやき

第6回:2016年12月9日

帝国データバンク(TDB)の全国企業倒産集計によると、2012年から各月(但し2016年(4月迄)の倒産件数を比較すると、ほぼ前年同月比を下回っていることが判る。

2016年4月度の状況を業種別にみると、製造業(81件、前年同月比26.4%減)と卸売業(94件、同21.7%減)は、前年同月比で20%以上の大幅減少だが、サービス業(153件、同3.4%増)、不動産業(29件、同3.6%増)の2業種は前年同月比増となっている。

不況型倒産(※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を不況型倒産として集計)は531件(前年同月比13.9%減)で、2か月連続で前年同月比を下回った。
中でも販売不振(51件、前年同月603件)が前年同月比15.3%の減少となった一方、売掛金回収難(9件、同3件)は大幅増となったことが判る。

さて、「倒産」には二つの意味がある。
一つは法律上の倒産で、破産、特別清算、会社整理、民事再生、会社更生法等が適用された状態をいうのに対して、ニュースなどでよく耳にする「事実上の倒産」とは、6か月の間に2回目の小切手や手形の不渡りを出すことをいい、全ての銀行取引が停止されるため、 結果として仕入や支払が困難になり倒産状態と同じようになるため、事実上の倒産と言われる。

話は元に戻るが、企業は取引先の業績や支払い能力に応じて、販売額の上限を設定している。
これを与信という。
売掛金とは与信の範囲内で掛売した金額である。
現金と引き換えの場合は掛売にはならないので売掛金勘定をたてることはないが、多くの商取引は掛売となるため、販売・サービス(役務)の提供(売掛金の発生)から売掛金を回収し、現・預金になるまでの間が与信であり売掛期間である。

一般に、締めから支払いまでに1か月からから2か月の間があり、現金(小切手)でなく手形支払いとなると、手形が決済され現・預金となるまで更に3ヵ月程の時間を要することも珍しいことではない。
最近では耳にすることは少ないかもしれないが、台風手形と呼ばれる決済まで7か月(※立春から数えて210日頃には大きな台風が多く、迷惑なことからの喩)の手形もあった。

2015年版では組織の現状(課題)やリスクを考慮したマネジメントシステムが要求事項となったが、前出の売掛金回収難はまさしく課題でありリスクになり得るだろう。

営業担当者・販売担当者の仕事は顧客の開拓であるが、その苦労は、話を聞いてくれる会社を見つけるのも大変だが、見つけても「売りたいけど支払いは大丈夫?」から「売っても大丈夫」と見極めができるまで、商談を進めながら信用調査をすることにある。

取引先が健全かどうかを把握するために、トイレを観察するということは昔から言われる代表的な例かもしれないが、銀行の融資担当者は数年分の財務諸表のほかに社長の車、会社の雰囲気が良いのか荒れていないか、会社の悪口を言う社員がいないか、空き机が増えていないか、 在庫が無造作に置いてないか、利益を生まない設備や余計な経費が嵩む設備が増えていないか等多方面から取引先を見ている。

例えばトイレの汚れは、もしかしたら業績悪化で社員の士気が低下し、細かいところに気が行き届かなくなっていることの証かもしれない。
社長の車が高級車なのにタイヤが汚れてしかも擦り減った状態なら、資金繰りが悪く、タイヤまで金が回らないのかも知れない。
空き机が目立つなら、退社した人が増えているのかもしれない。

審査員やコンサルタントの中には、与信や売掛金回収に関する知識そのものが十分とは言えない、いや全く知らないという人もいるかもしれないが、与信や売掛債権回収は会社経営に大きく関わるので、それらの知識は審査員・コンサルタントとして 2015年版において課題やリスクに対応した組織のMSを審査するための知識(雑学でもよい)の一部ともなるだろう。

(風来坊)
WEB掲載日:2019年10月10日

<< 記事一覧に戻る

このページの先頭に戻る