ISOコラム

ISOの豆知識から失敗談まで!? 或る主任審査員のつぶやき

第6回:2016年10月28日

 今回はいつもと異なり、ISOとは無関係であるが熊本地震災害ボランティア活動の報告をさせて頂きたい。

 阪神淡路地震と同じマグニチュード7.3の地震が発生した熊本・大分地方で、被災された個人宅の瓦礫処理などのお手伝いのため、4月29日から5月1日まで、ボランティア活動に参加した。
必要な装備や災害センターとの連絡など事前準備などの知識では、山口豪雨災害時の経験が大いに参考になった

 倒壊した建物により多くの方々が亡くなるなど、甚大な被害が出た益城町などの地域は、連日繰り返し報道されていたので注目度が高く、ボランティアが多く集まることが予想できたこと、 報道されてはいなくても被害が出ている地区があり、助けを必要としている人たちがいること、一人の人間がボランティアで出来ることは限られており、 甚大な被害場所なら二人分の活動ができるということにはならないこと、取引先があること、の4つの理由から宇城市を選んだ。

 1日目:朝5時に自宅を出発。九州自動車道を南下。
一般車は植木ICで出なければならないが災害派遣等従事車両は益城熊本空港ICまで通行可能で、私の前後をガス会社や大阪市水道局の車両が隊列を組んで走行している。

 益城熊本空港ICから宇城市に至るバイパスや国道は、応急処置は済ませてあるものの10メートル毎に段差があるような状況で、波打っているという表現が大袈裟でない。

 殆どの家にブルーシートが掛けられているほど、どの家も屋根の損壊が激しい地区もある。
完全に倒壊し押し潰された家を横目に車を注意深く走らせる。

 7時半に宇城市災害ボランティアセンターに到着。
9時前に活動の申込を済ませ、初日の活動が始まった。
最初は7名で小川町の被災者宅の落ちた瓦や倒れたブロック塀の片付け作業だった。
我々のことを「神様が来たようだ」とその家の高齢の奥様。

 大量の瓦が軒下から庭にかけて重なり落ちており、土嚢袋は直ぐに30キロ程の重さになった。
瓦だけで2.5トンほどの量だ。
倒れた塀のブロックは廃棄するものを大きなハンマーで砕きながら運び易い大きさにした。

 午後も他の被災者宅で瓦などの除去・片付けを中心とした作業を同じチームで担当した。

 宿泊は車の中。
後部座席を前に倒し、何とか足を伸ばせるように工夫した。
余震も続き、4月30日朝7時5分頃の揺れを含めて3度車が揺れた。
夜明けが近くなり、東の空が少しずつ白さを増す中で、民家の屋根の黒いシルエットが歪に見える。
明るくなって分かったことだが、やはりその家も屋根が壊れていた。

 2日目の作業は3人のチームで倒れた箪笥などを元通りにするなどの屋内作業から始まった。
高齢の母親と私とほぼ同じ年齢と思しき娘さんの二人暮らしのお宅である。
足の踏み場もない室内の状況に唖然とする。
折り重なるように倒れた和箪笥から、たとう紙に包まれた着物や帯、小物類が飛び出したりはみ出したりという状況。
傷つけないように細心の注意を払って作業を進めた。

 この日は3件の屋内片づけや瓦礫処置などの作業を行った。
時折、ズンと突き上げる余震にハッと皆が動きを止め、顔を見合わせる。

 3日目は、軽度の障害があるが、普段は一人暮らしの中年男性のお宅の屋内片づけ作業を地元の女子高生と二人での担当。
立ち合いの身内の方々と一緒に片づけをする。
2度の増改築をしたというその家は大きく、部屋数も多く家財も多い。
後で確認したことであるが、男性5人という依頼だったのに、何故か男女2人という割り振りになったようだ。
完了しなかった場合は継続として明日に引き継ぐしかないと腹を決めた。
倒れた家具の割れガラスや食器や陶器の欠片が多いが、大型のブラウン管テレビは落下防止の器具でテレビ台と固定されていたので損傷はなかった。

 被災地では写真はご法度であるが、その家の皆さんが、「男手がなかったら、片付かなかった。これも何かの縁だ。写真を撮ろう」と皆さんの表情は明るかった。

 一見元気そうに見えたのは他の皆さんも同じである。
しかし、経験したことのない揺れに襲われ、今なお余震が続く非日常的な体験をしている最中、多量のアドレナリン分泌による一種の興奮状態にあると言え、見かけの元気なのだと思う。
被災者の皆さんの本当の困難は、興奮状態が収まってからと案じられる。

 この連休中に全国から多くのボランティアが集まったが、作業を割り振れずに無駄足となったケースも多いと報道されていた。
無駄になった思いや気持ちが残念だ。

 阪神淡路や東日本大地震を例に示すまでもなく、激甚災害では息の長い支援が必要である。
少し、日を置いて状況を見ながら、また何かのお手伝いができるようにしたい。

 最後に、ボランティアは一刻でも早く役に立ちたいとの思いが強い。
だがボランティアセンターのスタッフは総じて動作がゆったりである。
不慣れなこともあるだろう。
もう少し、チャッチャッと事を運べないの?との思いもあろうが、結果として逸るボランティアの気持ちを冷静にさせる効果があったと感じた。

(風来坊)
WEB掲載日:2019年9月13日

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