自主公開プログラム

2015年7月第一週

第25回:経営は強い意志で決まる(経営の原点12か条の第7条)

  

稲盛は、「経営には岩をも穿つ強い意志が必要」といいます。京セラの株式を株式市場に上場してからそのことをさらに痛烈に感じたといいます。稲盛の言葉を引用して説明します。「上場をしますと、来期の業績予想を発表しなければならず、それは株主への約束でもあるはずですが、日本では、多くの企業が、経済環境の変動を理由に下方修正することにためらいがないのであります。
一方、同じ経営環境の中にありながら、目標を見事に達成してみせる経営者もおられます。私は、そのように強い意志で、あくまでも計画を遂行していくような経営者でなければ、変化の厳しい現在の経営環境を乗り切っていくのは難しいと考えています。
状況変化に経営(目標)を合わせていては、一旦下方修正した目標でさえ、次にやってくる経済変動の波に翻弄されることになり、さらに下方修正が必要となってしまいます。そのようなことがあれば、投資家や従業員からの信頼を全く失ってしまうことでありましょう。こうしたいと決めたなら、経営者は強い意志でやりぬかなければならないのであります。もともと、経営目標とは経営者に意思から生まれたものでありますが、同時にその目標が、従業員全員がやろうと思うようなものとなっているかどうかが、大切になってくるのであります。いわば経営目標という経営者の意思を、全従業員の意思に変えることであります。
頭がよくて仕事もよくできる人が、その目標は、無茶です。出来るわけがありませんといって冷ややかな口調で出来ない理由を滔々と並べ立てて言ってしまうと誰も何もいえなくなり、いつの間にか低い目標に置き換わってしまいます。あまり努力しなくても、自然に達成できるような目標では、いけません。経営者と従業員全員が、目標を達成するためにさまざまな創意工夫をめぐらし成長することが大切です。目標は達成感のある目標でなければなりません」。
稲盛はこのように経営者が強い意志で経営に当たることの大切さをわかりやすく説きます。
稲盛は、かつて、京セラがまだ小さいときに、「月間売り上げ10億円を目指そう。目標を達成できたら、全社員を香港に連れて行く。達成できなかったら全員、禅寺で修行だ」といって従業員に宣言したこともあるそうです。すると皆、全員猛烈に頑張り、その目標を達成し、実際に2泊3日で香港に行き、従業員との絆をより強固にしたといっています。
一件、脅しと餌さで釣っているようにも思えますが、私は、稲盛流の「心を高める経営」と相反しているとは思いません。時には、このように従業員を鼓舞し、潜んでいるやる気を引き出して、何としても目標を達成するのだという経営者のその必死の思いを、あらゆる機会を通じて従業員に率直に投げかけることの大切さを教えていると思います。経営者の意思の表れである経営目標を、従業員と共有しつつ、その実現に向かって、従業員のやる気を燃え立たせることができるのならば、企業は必ずや成長発展を遂げていくと思います。



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